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山岳回帰

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立山の朝

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妙義山、星穴へ下降

山岳回帰 
 私の古い友人は、家族の介護で突然山には行けなくなった。
一年後、役目を終えて何事も無かったように山に復帰してきた。
山に行かなくても自然を愛することは出来た、
庭や公園や道ばたに咲く花にいとおしさを感じてきた。
小さな生き物にも心を配れる自分に、
山を離れてみて初めて分かった。
それが誇りに思えた。
介護を通して命と向き合い、
命の尊さを深く胸に刻んだ。
生まれ滅びる、
その営みに支えられた山の本当の自然の中に身を置いていたから、
真剣に命と向き合えた。
往年のクライマーだった彼は1年のブランクでロッククライミングを断念した、
体がもう以前のように動かなくなった。
だが、彼のその後の山登りはひとまわり大きくなった。
藪に分け入り、独特の世界観を生み出した。
命を惜しむだけではない、
いつかは滅び亡くなる生命との向き合いかた。
それを学べる本当の自然が山にはあるから、
それが彼の復帰の理由だった。

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秋山郷の秋

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月山にて


あれから
 最近は亡き人と2人で歩いた山道を再び歩くことが多くなった。
別に感傷に浸り思い出を辿っているわけではない。
素晴らしかった風景や自然を仲間と共有したいと。
 コロボックルヒュッテでランチ、
途中でコーヒータイム。
そんなことは一切なかった山登り。
時間があればその先の山に向かい、
時間と戦い余計な行動で山にとどまることが危険に繋がる。
そんな思いで山登りをして来た。
それがどんなに卑小でも、
自分ながらの未知の世界を求め、
自分のレベルのリスクを背負い続ける事こそ山登りの本質。
だがどうだろう、
体裁を捨て、信条に背を向けた時の安堵と喜びは、
なんと楽しいことか。
そんな中でも山は様々な判断を強いて、
自然は試練を与えてくれる。
谷間の様や山道を外れた藪や予期せぬ岩場、
不意に来る風や雨、
山道を取り巻く自然の有様が経験として身に有るとき、
山登りの楽しさが溢れる。
これからは沢の鮮烈な冷たさを感じ、
木々の声を聞くために山に行けそうです。 雅

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安達太良の紅葉

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黒姫山の外輪山を行く


雲の行方
 カサカサと鳴る乾き切った落ち葉が、
暖かい空気をため込む陽だまりの午後、
たとえば西上州の里山で、
ごろりと横になり、澄み切った青空を横切る雲を眺める。
雲一つない快晴の青空、という表現は山では極上の天気の証だが、
雲のない空ほど味気ないものはない。
一つとして同じ形がないものはそれぞれにどんな思いも託して行ける。
悩みがあれば空虚な物事を諭し、
迷いがあれば流れる時間を雲の行方が教えてくれる。
一度死んで、
雲になって漂ってみれば地上の自分がよく見える。
 膨大な仏典の中には真実はないそうだ。
それは文字で書かれているから。
だからこそ雲を眺めて深く思いを巡らすことの尊さがある。
水の流れ、風に舞う花びらに落ち葉、
雨だれに雪、焚き火の炎。
山には言葉や文字に出来ない全ての問いかけの答えが眠っている。
無心になって眺めてみれば
きっと求めていた真実が見つかる。 雅

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中ア、中小川渓谷の秋

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頸城、神奈山雪稜

メジャーとマイナー
 山登りが面白くなり始めた頃は、
人気のあるメジャーな山に目がいってしまう。
山スキーなら憧れの斜面やクラッシクル-トである。
沢なら5つ星である。
それらをひと通り登り尽くすには5年から10年はかかるだろう。
多くの人は色々な事情でその段階で山登りから遠ざかってしまう。
道を探し、人の行かない山を見つけ、
蓄え続けた経験と技術が生かされた時、
そこに何もなかったとしてもメジャーな山では決して味わえない充足感を感じることが出来る。
人の匂いのしない道には、
同じような思いで歩いた人の微かな息遣いが聞こえてくる。
見つけることの楽しさ、
確かめる事の面白さ、
自分で描くことの大切さ。
そんな本来の山登りの喜びを知るとき、
地形図がガイドブックになり、
目的地に出会いが生まれる。    

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蓬沢源流の滑降、谷川連峰

雪の山中にて 
P1を巻きながらコルに向かう途中、
その先は空しかない尖った雪稜を真っ白な兎が跳ねていった。
そういえば下から仰ぎ見た時、
この頭上あたりを鷹が輪を描いて飛んでいた。
尾根筋には真新しい鹿の糞、
滑り込んだ沢の下流のわずかに顔を出した水流の窪地から、
立派な尾羽のヤマドリが堪えきれずに大きな羽音を立てて樹林の斜面に飛び去った。
天幕場ではカラスが一羽、
こちらの様子をうかがうように薄暗くなるまで執拗に鳴いていた。
灯りを消した夜更けの天幕の外では何やら動物の気配がしていた。
晴天が嘘だったように明け方には雨が降り出した、
確かな足取りで雪の季節が去りゆくことを複雑な思いで感じていた。
朝、天幕場から10m程離れた昨日の我々のトレ-スの上に、
ヤマドリのむしられた羽根が散乱していた。
自然の有るべき営み、
雪が音をかき消す静寂の山の懐で、
いつもは無関心で疎外されている筈なのに、
初めて山の生き物に自分はどんな風に見られているのだろうと、
見られる自分を意識できた。
訳もなく嬉しかった。

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鳥甲山山麓の天幕場にて

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プロフィール

bunatoiwana69

Author:bunatoiwana69
山のソナタ集へようこそ!
19の時から山登りを始めて現在75歳。
東京の京橋に生まれ、都会に育ちながらも山の自然に憧れる。
脇目も振らず、馬鹿のひとつ覚えで山登り一筋。
時々の風景と想いを切り取りブログにしました。

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