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沢登り

沢登り

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沢初めの日 
沢登りを始めて数十年間、毎年のことであるのに、
その年初めて沢に降り立つときの胸の高鳴りは何だろう。
同じ季節の残雪のアルプスとは対照的な自然の内なる風景。
水に触れる喜び、新緑の谷間の匂い。
同じ繰り返しなのに、毎年新鮮な気持ちで迎えられるのは何でだろう。
葉の色、水の量、光の様。同じ場所に立っても、
同じ風景がない山の魅力と、
次は何が現れるのだろうかと思いを巡らす谷への期待感。
難局をパズルのように解き明かし、越えて行く爽快感。
時には自分を越えた局面に耐えきれず逃げ場を探す。
谷の中で、私は成長したような気がする、
そして毎年この日を迎える事が出来たら
これからも成長して行けるような気がする。


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沢登り 
沢登り技術の中には冬山以外の登山技術の全てが詰まっている。
河原の歩き方から、徒渉、泳ぎ、へつり、高巻き、
草付きの通過、雪渓の通過、幕営、焚き火、藪漕ぎ、
読図や天気図、それぞれには技術という言葉が付き、
習得、熟練の必須項目である。
時には熊やマムシ、蜂にも遭遇する。
猿も怒らせると怖い。
ずっと水に浸かっている時は低体温症への配慮も必要になる。
冬山技術ではないが源頭部の急な雪渓ではそれなりの技術も必要になる。
更に岩登りの技術、ザイルワーク、確保技術、ハーケン打法、支点の取り方、懸垂下降、
楽しみを求めれば釣りの技術に山菜やきのこ。
沢登りにはどれだけの技術が詰まっているのだろう。
初心者、中級者などという言葉があるが、
どこまで習得して初心者から次のステップに行けるのだろうか。
年に10回3年で30回、
圧倒的なゴルジュや滝の前で冷静な判断と対処が求められ、
果敢に挑み谷の自然に同化し、沢に癒される、
技術の裏づけがあって初めて知る事の出来る生きる喜びには、
寄り道をしている暇のない、
遠い過程があることを知っていただきたい。  

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沢登りの季節へ
春から夏へ、その移り変わりは生き物の成長に似ている。
近くでいつも眺めているとその変わり様が分かるが、
離れているとなかなか変化が掴めない。
草木の緑の色の濃淡であったり、
水のほんの僅かな温みだったり、雨粒の大きさであったりする。
分厚い葉が陽を遮り、明らかに違う雲が沸き上がり、
叩くような雨音になる盛夏。
そのほんの少し前に生き物は華やかな満ちあふれる自分を育ててゆく。
花を咲かせ、子供を育てることで自分を表現する。
そんな季節と重なる自然の中で、足で沢水を感じ、
五体を投げ出し全身で歩いて源流を目指す沢登りが今年も始まった。

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沢のスタイル 
ちょっとやっかいな滝に出た。
遡行図では滝の左隅の凹角に足をつっこみずり上がるとある。
だが滝の裏側が抉れて何とか通過できそうだ、
滝の水圧は強烈だがへばりつくようにして滝見をすり抜けた。
右側に抜けるとル-トが開けて快適な岩場となった。
遡行図は書いた人のスタイルである、
それを鵜呑みにして真似ることは自分のスタイルを捨てることだ、
あくまでも自分の目で見て、自分の感性でル-トを探したい。
服装の出で立ち、足ごしらえ、食事、泊りのスタイル、
それぞれに基本はあっても守るべき鉄則はない、
それが沢登りである。
沢登りにスタイルを強制してはならない。
こうあるべきものは、決まって個人の経験から来る思い込みが多い。
それは確かに正しいかも知れぬ、
だがそれが全てではない。
なぜなら沢登りが生い立ちや生き方から染み出る
生活の全てを背負った山登りだからだ。      

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我が渓
源流を目指し、車を降りた林道から、
本流に下降すべく急な藪の斜面を下る。
谷に落ち込む支尾根を慎重に辿ると
眼下に褐色の岩壁に囲まれた険悪なゴルジュの食い込みが臨めた。
えぐられた谷底に深い釜と滝が行く手を塞ぎ、
とても降り立てる所ではなかった。
再び尾根に戻り、
上流の地形図のゆるみを目指して再び本流への下降を試みる。
藪をかき分け、地形図では読みとれない小沢を辿ると、
突然水流が宙に消えた。
身を乗り出してのぞき込むと
水流は足元から落ち込んだ岩壁を踊るように落ちていった。
左右見渡す限りU字状の谷を凹凸のない褐色の岩壁が囲み、
人を拒んでいた。
最上流で降り立った沢筋は何事もなかったように穏やかで
、山毛欅に囲まれて凍えるほどの水流に岩魚が踊っていた。
あの岩壁に囲まれた谷筋に降り立ち、
谷からの空を眺めたい。
ことさら困難を求めるのではない、
ガイドブックで探した憧れの渓ではない、
私の原点の沢が有るような気がした。 

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谷の造形 
山は広大で深い、
だが、人の頭の中はもっと広く奥深い。
そんな風なありがちな言葉に頷いていた頃もあった。
沢登りで谷を歩き、
想像も出来ない風景に出会うようになってから思いは変わった。
天空から落ちてくるような滝、
千差万別な岩質に刻み込まれた水の流れ。
人の想像力の貧しさを知り、
想像を絶する造形に何度胸を突かれたことか。
谷を埋め尽くした、むせるような自然林の新緑の匂い。
吹き渡る風が緑色に見えた。
強風に木々がうねるようにざわめき、
山全体が動いて、押し寄せて来た。
数千年をかけて形作られた自然の途方もない風景が、
谷にこそある。
人の一生はたかだか数十年。
その中でどれだけのものに出会えるか、
楽しみな沢登りの季節がやってきた。  

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プロフィール

bunatoiwana69

Author:bunatoiwana69
山のソナタ集へようこそ!
19の時から山登りを始めて現在75歳。
東京の京橋に生まれ、都会に育ちながらも山の自然に憧れる。
脇目も振らず、馬鹿のひとつ覚えで山登り一筋。
時々の風景と想いを切り取りブログにしました。

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