fc2ブログ

記事一覧

房総の山と谷

房総の山と渓谷 

resize8806.jpg
名もなき岩峰だらけの山
沢を遡行すれば必ず岩峰に行き当たる。

resize8824.jpg
沢はU字に抉れ、沢床は滑が続く。 四郎治沢出合。

 勝山、津野辺山
晴れれば東京湾を隔てて富士山が望める。


 延々と低い山並みが続く房総。低山故に顕著な尾根筋は少なく、入り乱れた山道に惑わされ方向を見誤る。人が歩けそうな所には必ずそこを知る人だけが歩いてゆく踏み跡がある。よそ者の為の道はほとんど無く、目印はその人だけに意味がある。一旦踏み込んで方向を誤ったら最後、迷宮に入り込む。更に難しくしているのは渓谷である。どこの谷もU字状に掘れた平坦な渓谷で、決まってナメ床が延々と続き側壁は高く、蛇行を繰り返して人の行き来を阻む。壁は地層をむき出しにして太古の模様を描き、大地の鼓動と計り知れない栄久の流れに感動さえ覚える。その渓谷にトンネルを掘り川の流れを変え、滝に足場を刻み、そこを生活の場とした先人の足跡を発見するとき、人の労力と生身の偉大さを知る。充ち満ちた自然ではない、人々と隣り合わせでいながら頑なに人を拒んでいるような野山。房総に冬山はない、ただ冬ざれと寒空があるだけ。そこには迷宮におそるおそる足を踏み入れる冒険心と好奇心を満たしてくれる不可思議な魅力がある。物事は表裏一体、表と裏から無邪気に眺められる柔らかさを持つ者だけが房総の山と渓谷で嬉々として遊べる。

resize8811.jpg
四郎治沢の沢筋

川廻の風景
岩壁をくり抜いてトンネルを掘り、蛇行する沢を真っ直ぐに流した。蛇行部分が残されて平地が生まれる。
房総独特の風景が育まれた。
resize8801.jpg
川廻最大のトンネル。三間川、その向こう10mの滝だ。

resize8825.jpg


resize8810.jpg


 低山の魅力というのは人にはなかなか伝えにくい。
そもそも富士山より低い山は全て低山であるなどと定義している人たちもいるように、捉えにくい概念である。
私とて冬は山スキー、夏は沢登りに興じている。シーズンオフと思われる季節に低山を歩いているのである。
飛び抜けて魅力があるわけではないし、もう中高年に仲間入りをして久しいが、今でも1年中低山を歩く気はさらさらない。
アルプスと同じ気持ちで歩いては魅力を感じることはないが、まったく違う視点で山登りを捉えることが出来たとき、低山の魅力が理屈抜きで分かるようになる。私のきっかけは子供との山登りであった。一人前に口もきけない、ましてや歩くこともやっとという、幼児を連れての山登りという選択の中で、幼児と一緒でなければ生涯知ることのなかった山に出会うことが出来た。それは今までの山登りの延長線上では考えられないものであったが、新たな山での楽しみを発見をして、どれだけ人生が豊かになっただろうか。箱根の山々、西上州の岩山、中央沿線の山、房総の山、秩父や栃木の里山、そして広大な阿武隈山地。その後子供は山から離れていったが、私は一層低山歩きに夢中になる。
 その魅力を一言で表すなら、そこはどうなっているのだろうか、という探求心であろうか。道標に導かれてゆけば自然と山頂に辿り着く山に低山の魅力はない。かといって道もなく藪に被われたり困難な岩場のある奥深い山では、楽しみどころか身の危険さえ生じてくる。低山はより困難を求める山登りではない。山里に近い所で、地図を広げて道を探索し、人々の往来の証を見つける楽しみこそ低山の魅力なのである。山自体の魅力だけでなく、山を取り巻く様々な要素が混ざり合った楽しさである。ふと心安らぐ風景の中に身を置きたくなる事がある。乾いた季節に陽を燦々と受けて山中を彷徨いたくなる。低山こそそれを満たしてくれる。 

城山「公園
房総の低山は町も近く、海も近い。 館山城山公園から

resize8805.jpg
山へのアプローチは林道が多い、手掘りのトンネルが魅力だ。

resize8946.jpg
保田の海岸で夕陽を眺める。


房総の魅力
 低山の宝庫である房総の魅力を考えてみれば、まずお堂を訪ねる楽しみがある、日本で唯一の四方懸造り(しほうかけづくり)の笠森観音、岩壁をくり抜いて作られた高宕観音、寂光山の抉れた崖にしがみつくように建つ寂光不動、巨岩が覆い被さる三石山観音寺など、そのお堂を訪ね歩くだけでも有意義な時を過ごせる。又房総は全般に柔らかい地層で成り立っているために浸食された渓谷が蛇行し、尾根上の岩でさえ様々な造形を作り出している。岩に笠を被したような笠岩、渓谷のただ中に浸食されずにそこだけが残された犬岩。又その湊川の下流には不思議な所がある。浸食された廊下のような渓谷の側面に地層が模様を作り、目の錯覚を起こしている。傾斜が有るのに水の流れがなく瀞となっていたり、まるで高い方に水が流れているようなところがある。そして渓谷の傍らには姥石と呼ばれている奇妙な形の人工の巨石がある。山里の風景と深く結びついた山は、その土地の歴史を訪ねる旅でもある。延々と低い山並みが続く房総、歩いても歩いても、その先に次の山が見えてくる、底なしの面白さがある。
     「 岳人」2009年12月号「こだわりの低山」に執筆掲載

resize8817.jpg
岩に抱かれた高宕観音。

梨沢の大滝
観光とは無縁の滝が幾つかある。代表は梨沢の大滝。

resize8971.jpg
高宕大滝。黒くて迫力がある。

三間川
房総の沢登りは12-2月までがシーズン。それ以外は蛭との戦いとなる。


resize8816.jpg
房総は地層の宝庫、そんな地層が不思議を生む。
この写真、上が下流なのだ。

奇岩も多い、意味不明な造形、何故とかしげる岩も
犬岩
湊川の犬岩、これは浸食で出来たもの。

姥岩
謎の姥岩


水仙
師走になると房総では水仙が咲き始める。正月用に出荷されるので12月中旬頃が最盛期と言われていたが、最近は季節がずれるようで2月に水仙祭りが行われる地区もある。とにかく2月まではどこかで水仙が見られるのである。人気のあるエリアは嵯峨山や江月、大崩れ地区であるが、どちらも観光地化されて趣がない。そもそも房総の水仙は農家の方が栽培しているもので、どこを歩いても水仙を見ることが出来る。付近の山を巡りながら、ひっそりと山間に広がる水仙畑を訪ねるコースを毎年歩いている。水仙が終わる頃に頼朝桜が咲き始める。早い時期には梅と水仙が咲き、その後に水仙と頼朝桜が競演する。房総は花の半島である。大勢で行くところではない、だが一人で行くところでもない、何が大切かを教えてくれるのもそんな時の気持ちの襞である。


水仙5景
resize8802.jpg

resize8767.jpg

resize8766.jpg

resize8947.jpg
梅と水仙が同時に咲く。

resize8826.jpg
桃源郷日向畑の水仙畑

頼朝桜
resize8808.jpg
水仙が終わる頃、頼朝桜が咲く。

resize8807.jpg
河津桜と同じ品種、頼朝伝説に彩られた名である。

12月に入っても見ることの出来る紅葉は房総楢では。
resize8944.jpg

志駒川
生駒川沿いの紅葉。
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

bunatoiwana69

Author:bunatoiwana69
山のソナタ集へようこそ!
19の時から山登りを始めて現在75歳。
東京の京橋に生まれ、都会に育ちながらも山の自然に憧れる。
脇目も振らず、馬鹿のひとつ覚えで山登り一筋。
時々の風景と想いを切り取りブログにしました。

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
写真
609位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
風景
222位
アクセスランキングを見る>>

山のソナタ集

山のエッセイと写真でつづる日々

ブロマガ購読者向けメールフォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文: