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八ヶ岳横岳

八ヶ岳横岳 大同心厳冬

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大同心厳冬

 ドーム正面壁に取り付いた時
どんよりとした雲間からとうとう雪が舞い始めた。 
みるみる視界がなくなり雪は横に流れ始め
いつの間にか風雪の中となった。
アブミを数回掛け替えるともう指先に感覚がなくなる。
手を叩き、腕をぐるぐる回しながら無理矢理指先に血を押しやる。
何度も繰り返しながら黙々とアブミを掛け替えてゆく。
風に流されるアブミ、弓なりのザイル、
視界を遮るフード、ゴーグルの雪、
何もかもが妨げとなり動きを鈍らせる。
負けそうになる自分が分かる。
風や寒さに負けるのではない、
手を叩く努力を怠り、指は使えなくなり動けなくなる。
登れないのではない、辛さに耐えきれずひとときの安らぎを選ぶ。
自分に負けると言うことはこんな事だ。

風に支配された終了点に
這いずるように辿り着く。
既に手に感覚はなく、
ただ岩から解放された温かみが体を巡ると
無数の針でつつかれたような痛みが指先を襲う。
腕を押さえながら痛みに耐える。  
血が蘇ってゆく痛み。
それはまさに生きていることの
痛みに違いない。
やがてそれは
痺れとなって和らいでゆく。
ザイルがピント張る、後続が登り始めたのだ。
頑張ってくれ、
こんな時、信頼がなかったら心が持たないだろう。

技術や方法ではない、
困難に遭遇したときに
常に普通であり続ける事の難しさを
生きてゆくことの痛みとして
わたしは厳冬の岩壁で学んだ。

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横岳全景 大同心が大きい、ルンゼを挟んで小同心。

南陵全景
南稜全景。正面を登っても南稜を登ってもドーム登攀は避けられない。


南陵とドーム壁
ドームと南稜


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夕景の八ヶ岳連峰。遠景でも大同心の存在感が光る。


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プロフィール

bunatoiwana69

Author:bunatoiwana69
山のソナタ集へようこそ!
19の時から山登りを始めて現在75歳。
東京の京橋に生まれ、都会に育ちながらも山の自然に憧れる。
脇目も振らず、馬鹿のひとつ覚えで山登り一筋。
時々の風景と想いを切り取りブログにしました。

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