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桃源郷

桃源郷

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西上州大上集落と立岩の風景

 人が滅多に足を踏み入れたことのない人跡未踏の領域で、
今までに見たことのない風景に出会う時に
、人は桃源郷を感じるのであろうか。
私は冬山や山スキーでの過酷なラッセルの果てや
沢での滝やゴルジュ突破の先にある穏やかな天幕場のたたずまいに桃源郷を感じたことはない。
どんなに珍しい風景や壮大な景観に出会っても、
それは等しく感動的な出来事である。
私の感じる桃源郷は道を求めて歩いた低山彷徨の果てに、
ふと下り立った山里の風景である。
里山を背景にひっそりと佇む家屋と土の香り。
庭先には季節を問わず色彩豊かな花が彩り、
周囲には畑や田んぼが広がる。
鳥がさえずり、木々の緑が青空に映えて、
雲の白さが目にしみる。
きっと幸せに暮らしている、
そう思わせる人々の営みの中にこそ、
桃源郷はあると信ずる

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房総法明の集落

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法明の段々畑


西上州の山里、上底瀬に下り立ち、畑で作業をしていたおばさんに道を聞いたことがある。すぐ下の集落である下底瀬にあるはずの登山口の様子を知りたくて。「2年ばかり出たことがないから分からないなー」車なら数分、充分歩いて行ける距離である。入り口に立って見渡せば全てが視界に入るような、谷間の狭い集落から全く出る必要が無かったのであろう。毎日を満足して生活し、出かけようとも出かける用事も無かったのであろう。人の楽しみや不自由さは、他人には分からない。ましてやそこの暮らしの善し悪しなど通りすがりの我々には知るすべもない。ただ、幸せそうな風景の中でのんびりとした営みを感じ、穏やかな人たちに出合う時、ユートピアは存在するのだと思う。房総にはそんな山間に隠れたような集落が多い。日向畑、高瀬。ひと冬を水仙の香りに包まれて過ごす人々の穏やかな様に、いつも癒されて都会に戻る。私の心象風景がいつまでもそこにあることを願って、今年も水仙の道を辿った。  


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滝田城址から臨む伊予ヶ岳と山里の風景


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房総の山里

蓼沼再訪 
畑は荒れていた、
土は硬くひび割れて人の温かさが無かった。
明るく開けた谷間の底の1軒には生活の香りが感じられなかった。
見下ろすように空に向かって谷間を囲んでいた見事な段々畑には
見知らぬ草が生い茂って、憩いは無かった。
かつてのそこは、有り余る豊かさではなく、
安らかに暮らす事のあり方を学んだ空間だった。
東に開けた谷筋から柔らかな晩秋の朝陽が集落全体を橙赤に染めて、
土こそが美しく輝く佇まいに桃源郷を見た。
私は既に舗装された道路を横切り、谷間の上のもう1軒の前に出た。
そこには今でも老夫婦が住んでいた。
家の周りにはコスモスが咲いて、良く耕された畑があった。
少し安心した。
「元気に長生きして下さい」
にこやかに朝の挨拶を交わすおばあさんに、
わたしはそう心の中でつぶやいて、勝手な思いを託していた。
腰を曲げながらせっせと掃除をする姿に、
死んだ母を思い出しながら、私もせっかくもらった命、
大切に生きてゆきたい、と思うのである。

ひとぼし山から眺める蓼沼
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大屋山の山麓に民家が一軒、これが蓼沼である。ひとぼし山から眺める久しぶりの風景は、遠目からには良く耕された畑の土が見えた。かつて感じた桃源郷は今まだ健在であろうか。
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bunatoiwana69

Author:bunatoiwana69
山のソナタ集へようこそ!
19の時から山登りを始めて現在75歳。
東京の京橋に生まれ、都会に育ちながらも山の自然に憧れる。
脇目も振らず、馬鹿のひとつ覚えで山登り一筋。
時々の風景と想いを切り取りブログにしました。

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