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天幕

天幕 小さな宇宙


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天狗原山への稜線にBC

 ある時は
寒さで眠れない夜かも知れない。
不安を一杯残して
明日の行動を思いやる夜かも知れない。
風雨にさらされ天幕が破れ、ポールを握りしめて迎える朝もあった。
だが、布一枚で囲まれた不思議な空間で
わたしは多くの自由な時間を過ごし
自分の意気地なさを責め、貧しさを嘆き、
人の勇気と暖かさに慰められた。
天幕の重さを知ることは
山登りの重さを知ることでもある。

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守門岳の懐で、木の間の豆粒のような天幕BCを目指して滑降。浅草岳が大きい。


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東北焼石連峰のBC



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この天幕を目指して

天幕場にて 
他には誰もいない雪原の天幕場にはそれぞれの思いで集まった仲間がいた。10人がゆったり座れる自作の雪のテーブルには粗末でも自慢の酒と心こもった肴とが並んだ。堅実なターンで唸らせる奴、若いのに華麗に滑る奴、果敢に挑んで転倒する奴、下りでもスキーに負けずに歩く奴がいた。見事に野菜を裁く板さんがいた。山頂で楽しみにしていたワインを忘れた奴がいた。痛い腰をかがめて必死に歩く奴もいた。真っ赤に日焼けしたおじさんもいた。私がとっくに失ってしまったものを奴らはたくさん持っている。太陽の傾きだけが時を知らせる雪原で、至福の時が過ぎていった。夕日が彼方を燈赤に染めて夕闇が包み込んだ。毎日の繰り返しがここでは一生に一度の時を刻んでいる。この日みんなで囲んだ雪のテーブルは信頼の証であって欲しいと思う。 




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中ア、今朝沢の中流域でツエルトビバーク
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海谷山塊アケビ平BC
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雷鳥平BCの5月連休はまさにテント村。


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焼岳中腹から穂高岳を望む絶景。天幕は別パーティ、さぞ素晴らしい日であったろう。

重荷の山 
昔の天幕は布製の家形のものが主流であった。今のナイロンテントでは想像も出来ない程の重さである。当時の合宿はそんな家形の10人用天幕を担いでの行程であった。ポールだけで一抱えもある代物で、当然誰かが担がなければ成り立たない合宿でもあった。私は常に背負子を担ぎ、荷物は30キロを越えていた。中でも北アルプス北部の北又から朝日岳に登るイブリ尾根は、コースタイムで8時間を要する長く辛い急な尾根であった。顔には塩が吹き、肩は赤く腫れて、足は引きつった。夏まだ豊富な雪渓を残し、手つかずのお花畑が無限に広がるその風景に、何度佇んだことか。最近登りが辛くて仕方ない時がある。そんな時になんとか頑張れる源は、確かにあのとき流した、しょっぱい汗を思い出すからだ。重荷が決してハンデにはならない、それをあの頃の合宿で学んだ。最近は過去の山に旅することが多くなった。年と共に衰える何かを支えてくれるのは、自分の事よりもパーティのために全力を尽くせて、生きることに有意義だったあの日々の山々であるからに違いない。過去があった、だから今が一番。 

小阿仁川源流部
小阿仁川源流部にて
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プロフィール

bunatoiwana69

Author:bunatoiwana69
山のソナタ集へようこそ!
19の時から山登りを始めて現在75歳。
東京の京橋に生まれ、都会に育ちながらも山の自然に憧れる。
脇目も振らず、馬鹿のひとつ覚えで山登り一筋。
時々の風景と想いを切り取りブログにしました。

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