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八海山

八海山

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麓から望む八海山

 とあるスキー場の最上部で、わたしは白銀の越後山脈を眺めていた。
思いがけず晴れ渡った厳冬の冴えた空間に羨望の峰々があった。
見たこともなかった彩りの秋、それを越える秋を未だに知らない八海山。
春は春、山道の両側を埋め尽くしたカタクリの花、傍らに咲く大輪のシラネアオイ。
あの八海山があんなに近い。
身を引き締めながらゲレンデで佇んでいるわたしに、山は語りかけているようであった。
リフトに乗って、ただ滑るだけのスキーが覚えたての頃は楽しくて仕方がなかった。
登高の辛さも、ルート取りの苦労もなく、ただ楽しむだけの気持ちに浸って、
自分の格好悪さも知らずに、悦に入り、
気持ちまでもがゲレンデスキーに奪われつつあった。
冬山は遠ざかり、歩く山を忘れ、リフト代が当たり前の出費になっていた時、
わたしはあの白銀の越後山脈に頬を打たれた。
それは束縛された人工のコース内に何も発見できなかった事よりも
自然を愛し自然を舞台にした山登りを続けてきた事への誇りのようなものであったろうか。
多少の楽しみの中で
自然の自由さを捨ててしまったスキーの中には
もはや人に語るべきロマンもない。
道具として競い合い、うまさやスピードを誇るスキーではなく、
自然を享受し、木々や雪の造形に立ち止まり、
心を寄せ、その日一日の自分の存在を誇れるものとして
わたしは生涯スキーを楽しんでゆきたいと思う。 

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中ノ岳と厳冬の岩峰     薬師岳から

 シールを効かせながら末端の頂に立つとガスが晴れて厳冬の越後山脈が広がった。
特別な思いの八海山であった。
山スキーとの出会いがなかったらわたしは今よりずっと貧しかったに違いない、と思う。
どんな時でもわたしのわがままを聞き入れ、
ひたすら足元からエールを送ってくれる。
辛い登高の時は「ゆっくりゆっくり」と話しかけ、大斜面に飛び込むときは「行くぞ」と呼びかける。
道具に人生を託せる人の中にわたしは訳もなく潔い生き方と人への偽りのない優しさを感じる。

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阿寺山からの滑降、八海山にダイブ。  
 
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プロフィール

bunatoiwana69

Author:bunatoiwana69
山のソナタ集へようこそ!
19の時から山登りを始めて現在75歳。
東京の京橋に生まれ、都会に育ちながらも山の自然に憧れる。
脇目も振らず、馬鹿のひとつ覚えで山登り一筋。
時々の風景と想いを切り取りブログにしました。

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